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『怖い』『痛そう』『費用が心配』

先日、上あごの左右の奥歯にソケットリフト(上顎洞底挙上術)を併用し、下あご右側の3部位とあわせて計6本を同日に埋入する手術を行いました。

「6本を一度に」と聞くと、身構える方が多いと思います。

実際のところ、まとめて行うことには利点も負担もあります。そして、その負担を減らすための方法も用意されています。今日はそこをお話しします。


【インプラントは一度に何本まで入れられるのでしょうか】

「何本まで」という上限が決まっているわけではありません。今回6本の埋入でしたが、もっと多くのインプラントを同時に入れることはあります。

判断の材料になるのは、本数そのものではなく次のような点です。

・全身状態が安定しているか
・骨の量と質が、計画した位置に対して足りているか
・手術時間がどのくらいになる見込みか 麻酔の量は問題ないか?
・術後の生活に、どこまで影響を許容できるか
・かみ合わせ全体をどう再構成するか

奥歯と前歯、上あごと下あごでは、必要な処置も治癒のスピードも違います。「同じ日にまとめられるか」は、これらを合わせて考えた結果として決まります。

冒頭のケースでは、上あごに骨の高さを補うソケットリフトを併用しながら、下あごの3部位も同時に進めました。骨の条件と全身状態が整っていたためです。


【まとめて行うと、何が良いのでしょうか】

・外科処置の回数が減り、治癒の期間を短くすることができる
・麻酔や鎮静を受ける回数、薬を飲む量が少なくなる
・かみ合わせ全体を、ひとつの設計として組み立てやすい
・通院回数が減り、仕事や生活への影響を抑えやすい
・腫れや痛みを経験する回数そのものが減る
・コストが抑えられることがある

最後の点は見落とされがちです。2回に分ければ、腫れる期間も2回訪れます。1回にまとめられれば、その期間は1度で済みます。

治療期間の短縮につながることもあります。ただし骨造成を併用した場合は、骨が成熟するのを待つ期間が加わるため、単純に短くなるとは限りません。


【一方で、負担も大きくなります】

正直にお伝えしておきます。

・1回あたりの手術時間が長くなる
・術後の腫れや違和感が、広い範囲に出やすい
・全身状態の管理に、より配慮が必要になる
・術後しばらくは食事に制限がかかる
・当日から数日間の生活に、ある程度の余裕が要る

つまり「まとめたほうが必ず良い」という話ではありません。体調、お仕事の都合、通院のしやすさ、ご本人の希望。これらを合わせて決めていくものです。



【手術の負担を減らす:歯科麻酔専門医による静脈内鎮静法】


長時間の手術で負担を抑えるために有効なのが、静脈内鎮静法麻酔です。


〇どんな麻酔なのでしょうか

腕の静脈から点滴で鎮静薬を投与し、うとうとした状態をつくります。

全身麻酔とは違い、意識が完全になくなるわけではありません。呼びかけには反応できる状態です。それでいて、手術中の記憶はほとんど残らないことが多いとされます。

痛み止めとしての局所麻酔は、これとは別に行います。鎮静法は「痛みを消す」ためではなく、「緊張と恐怖を和らげ、体への負担を抑える」ための方法です。


〇担当を分けることに意味があります

当院では、鎮静と全身管理を歯科麻酔専門医が担当します。

執刀する歯科医師は手術に集中する。呼吸、血圧、脈拍の管理は別の担当者が専任で見る。役割を分けることで、長い手術のあいだも状態を細かく追えます。

酸素飽和度、血圧、心電図をモニターで確認しながら進めていきます。


〇この方法で得られること

・緊張や恐怖感がやわらぎ、長時間の手術にも臨みやすくなる
・血圧や脈拍の変動が抑えられ、循環の状態が安定しやすい
・手術中の記憶が残りにくく、次の治療への抵抗感が小さくなる
・治療を何回にも分けず、一度にまとめる設計が取りやすくなる
・全身的な配慮が必要な方でも、モニター管理のもとで進められる
・手術中に全身の問題が起こっても、麻酔専門医により専門的な対応が可能となる

歯科治療そのものに強い苦手意識がある方にとっては、この点が大きいこともあります。


〇注意していただきたいこと

・静脈路の確保と、酸素飽和度・血圧・心電図のモニタリングが必要です
・術前の絶飲食が必要になります
・当日は車・バイク・自転車の運転ができません。付き添いの方がいると安心です
・眠気やふらつきが残ることがあり、当日は安静に過ごしていただきます
・全身疾患や服薬内容によっては、適応とならない場合があります

鎮静を使えば安全が保証される、という訳ではありませんが、負担とリスクを抑える選択肢としてとても有効です——そう考えていただくのが正確です。



♦よくある質問♦

Q. 6本も一度に手術して、身体は大丈夫なのでしょうか?
A. 全身状態と骨の条件が整っていれば、複数本の同日埋入は珍しい設計ではありません。当院ではもっと多くのインプラントを同時に埋入することもあります。
ただし手術時間が長くなり、術後の腫れの範囲も広がります。静脈内鎮静法の併用を含めて、事前に相談しながら決めていきます。



Q. 眠っているあいだに終わりますか?
A. 静脈内鎮静法では、うとうとした状態になります。意識が完全になくなる全身麻酔とは異なりますが、手術中の記憶はほとんど残らないことが多いとされます。感じ方には個人差があります。



Q. 静脈内鎮静法は誰でも受けられますか?
A. 全身疾患の有無、服薬内容、当日の体調によって判断します。適応とならない場合や、別の方法をご提案することもあります。事前の問診と検査のうえで決めていきます。



Q. 鎮静を使った日は、そのまま帰れますか?
A. 回復を確認してからのお帰りとなります。ただし眠気やふらつきが残ることがあるため、当日の車や自転車の運転はできません。付き添いの方がいらっしゃるとより安心です。



Q. 何回かに分けたほうが良いこともありますか?
A. あります。予想される手術時間が長くなりすぎる場合や全身状態、骨の条件、生活の都合によっては、分けて進めるほうが適していることもあります。本数をまとめること自体が目的ではありません。



【安全性について】

インプラント治療、骨造成、結合組織移植はいずれも外科処置です。腫れ、痛み、内出血、感染、治りの遅れ、知覚異常、追加処置が必要になることがあります。複数本を同時に行う場合は、これらの範囲が広くなる傾向があります。

静脈内鎮静法には、呼吸抑制、血圧低下、悪心などの偶発症が生じる可能性があります。術前の絶飲食、当日の運転不可といった制約があり、全身疾患や服薬内容によっては適応とならない場合があります。

治療内容・結果・治癒経過・費用・期間には個人差があります。全身状態、喫煙、糖尿病、服薬内容、歯周組織の状態によって、全員に同じ方法を適用できるわけではありません。自由診療のため、費用・期間は目安であり症例により変動します。


監修者
榊原 毅
日本口腔インプラント学会 専門医/日本包括的矯正歯科学会 副代表/日本歯周病学会 認定医/インビザライン認定医/厚労省認定臨床研修指導医(東京科学大学 歯学部)

「不安を煽らず、できること・難しいことも含めて丁寧に説明し、納得して選べる診療を心がけています。」


参考文献

1. 日本口腔インプラント学会『口腔インプラント治療指針2024』
https://www.shika-implant.org/

2. 日本歯科麻酔学会
https://kokuhoken.net/jdsa/

3. Howe MS, et al. Long-term (10-year) dental implant survival: A systematic review and sensitivity meta-analysis. J Dent, 2019.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30904559/

4. 厚生労働省「医療広告ガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokoku/index.html


まずは話を聞くところから。自由が丘駅から近い立地(徒歩2分)で、必要なら選択肢を整理しながら一緒に考えます。症例を見る→ こちらをクリック