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矯正中、矯正後に歯ぐきが下がった|歯肉退縮の原因・予防・根面被覆による対応

『怖い』『痛そう』『費用が心配』—その気持ちは自然です。この記事では、よくある不安をひとつずつほどきながら説明します。


【「矯正が終わったら歯が長く見える」の正体は歯肉退縮】

矯正治療が終わった後、「歯が長く見える」「歯の根元が見えている」「冷たいものがしみる」と感じることがあります。これらは**歯肉退縮(しにくたいしゅく:歯ぐきが下がり、歯根の一部が露出する状態)**が起きているサインです。見た目の問題だけでなく、知覚過敏・歯根面のむし歯・プラーク付着の増加にもつながりうる現象です。
日本歯周病学会『歯周治療のガイドライン 2022』でも、矯正治療は歯周組織に影響を与えうるとされており、特に薄い歯肉バイオタイプや薄い唇側骨の方は、歯の移動方向によって退縮リスクが高まると整理されています。
矯正後の歯肉退縮はなぜ起こるのか


主な要因は複合的です。
• 歯を顎骨の外側に動かしすぎる(唇側の骨が薄いと、骨の外に歯根が出そうになる)
• もともと歯肉が薄い(thin biotype)
• 矯正前に歯周病が存在していた
• ブラッシング圧が強い
• 歯槽骨の薄い部位での無理な拡大移動
• 矯正装置周囲のプラーク残存による炎症


つまり、矯正の仕方だけでなくもともとの歯周組織の状態が関係します。このため、矯正前の**歯周評価・歯肉の厚み確認・骨の厚み確認(CT)が予防のうえで重要になります。

予防:術前にできること/術中にできること


術前

• 歯周基本治療(歯石除去・プラーク管理)の完了
• 歯肉バイオタイプの確認(薄い場合は移動計画を慎重に)
• CBCTによる術前の唇側骨の厚み評価
• デジタルセットアップによる移動方向・移動量のシミュレーション
• あらかじめ術前のシミュレーションにて歯肉退縮することが予想される場合は術前、術中、術後の歯肉退縮手術を計画しておく


術中〜術後
• プラークコントロール(器具・ブラッシング指導)
• 過度な頬側拡大を避ける設計
• 定期的な歯周モニタリング


これらを丁寧に行うことで、歯肉退縮リスクを下げる設計が可能です。ただしゼロにすることはできません。
起きてしまった場合の対応:根面被覆という選択肢
すでに歯肉退縮が生じた場合、根面被覆術(歯ぐきを覆い直す処置)で改善を図れるケースがあります。代表的な術式は次のとおりです(『歯周治療のガイドライン 2022』より)。


• 歯肉弁歯冠側移動術:隣接部の歯肉を剥離して歯冠側に移動し、露出根面を覆う
• 歯肉弁側方移動術:隣接歯の角化歯肉を側方に移動
• 結合組織移植術(CTG):口蓋から結合組織を採取し、退縮部に移植
• 遊離歯肉移植術:上皮と結合組織を含めた移植片を移植


このうち結合組織移植術は審美部位で用いられることが多く、被覆率・組織の厚み増加の両面で評価されています。適応は退縮の程度・歯間乳頭の高さ・骨の状態で決まります。


【よくある誤解】

誤解①:歯ぐきが下がったら戻らない。 → 程度とタイプによっては、根面被覆で改善できることが多いです。当院で対応可能です。
誤解②:歯磨きが弱いと退縮する。 → 逆です。強すぎるブラッシングが関与することが多いとされています。
誤解③:矯正の副作用は仕方ない。 → 術前評価・設計でリスクを下げることは可能です。当院では術前に歯周組織の状況を把握し、デジタルの強制シミュレーションを作成して歯肉退縮のリスクに配慮して治療計画を立てています。


※向いている方/向いていない方(一般論・根面被覆)※

■向きやすい
退縮部位が限定的/歯間の骨・乳頭が残っている/歯周病が安定/喫煙なし


■向きにくい
重度歯周病が未治療/歯間骨が大きく失われている/重度喫煙/全身状態が手術に適さない


♦よくある質問♦
Q. 矯正後に歯ぐきが下がりました。放置しても大丈夫ですか?
A. 軽度であれば経過観察となる場合もありますが、知覚過敏・根面う蝕・さらなる退縮の進行が懸念される場合は対応を検討します。まずは歯周評価をおすすめします。


Q. 根面被覆の費用の目安は?

A. 自由診療の場合が多く、1歯あたり概ね10万万円〜15万程度が一つの目安です(再生材料の使用の有無、結合組織移植を含む場合・部位・範囲により変動)。保険適用となるケースもあり、個別に判断します。


Q. 矯正と同時に歯肉を厚くする処置はできますか?
A. 矯正前に歯肉バイオタイプを厚くする処置(例:結合組織移植)を行うことで、退縮予防につながることがあります。適応は個別判断です。矯正中に適正な場所に歯根が動いたタイミングで行うこともあります。


Q. 歯肉退縮は年齢のせいですか?
A. 加齢も一因ですが、ブラッシング圧・歯周病・矯正・噛み合わせなど複数の要因が絡みます。年齢だけで説明することはできませんが、影響はありますので歯周組織のことも考慮した包括的、総合的な矯正治療の計画を立てることが大事です。



歯周外科処置(根面被覆・結合組織移植など)には、術後の痛み・腫れ・出血・移植片の壊死・被覆不全などのリスクがあります。すべての症例で完全な被覆が達成されるわけではなく、効果には個人差があります。喫煙・歯周病・全身状態によって、全員に適応できるわけではありません。自由診療となる場合の費用・期間は上記は目安で、症例により変動します。



監修者
榊原 毅 日本口腔インプラント学会 専門医/日本包括的矯正歯科学会 副代表/日本歯周病学会 認定医/インビザライン認定医/厚労省認定臨床研修指導医(東京科学大学 歯学部) 「不安を煽らず、できること・難しいことも含めて丁寧に説明し、納得して選べる診療を心がけています。」

ご相談は”まず整理する”ところから。自由が丘駅南口から徒歩2分、緑道近くの落ち着いた環境でお話を伺います。無理に治療を勧めることはありません。


参考文献
1. 日本歯周病学会『歯周治療のガイドライン 2022』 https://www.perio.jp/
2. 日本歯周病学会『歯周組織再生療法のガイドライン 2023』 https://www.perio.jp/
3. 日本矯正歯科学会『矯正歯科治療における治療指針』 https://www.jos.gr.jp/
4. Zucchelli G, De Sanctis M. Treatment of multiple recession-type defects. J Periodontol, 2000. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11022767/
5. European Federation of Periodontology (EFP) https://www.efp.org/